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鋼の娘/近藤ようこ

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ーっと、ずーっと読んでみたくてしょうがなかった近藤ようこ作品。まず絵がたまらない。そっけない、弾力のない線なのに、これ以上ないくらい、含みのあるふくよかな絵。こういう絵って、練習するだけじゃ描けないんだろうな。上手に絵を描けるようになりたいけれど、それ以上に、こういう色っぽい線を描けるようになったら一人前といえるかもしれない。絵描きとしてと言うより女として。

のつく浅い堀で、愛する人のさしのべる手をまつ女。けして溺れない、かといってまたいで渡れない水に腰までつかって、ゆらゆらと水の圧力に押されよろめきながら、幸せの、あるいは絶望の瞬間を待つ、へんに安らいだ時間。近藤ようこの絵はそういう水っぽいあたたかさがあるような気がする。

内向的な主人公の心情には、共感できると同時に、そのわがままさ自分勝手さに、我が身を見るようでイライラもさせられる。自分で心を開かずに、他人が思うようにならないと勝手に絶望して拒絶する。
「彼が全部わたしのものじゃないのなら いっそなにもいらない」
傲慢なまでの臆病さ。

傷つくまいとして傷つく。
傷つけまいとして傷つく。
愛そうとして傷つく。愛すまいとして傷つく。

がそれぞれに、傷ついた中身をさとられまいと、鋼でよろいをつくってゆく。そんなのは、いつまでもうまくゆくはずがない。
あやういバランスで向かい合うよろいが、ちょっとしたことで均衡をくずしてもろい中身があらわになる。その場面は、堅い破片の散らばるひりひりした場所でなく、水が高いところから低いところへ、あるべきところへ流れ着くという、やさしいイメージ。疲れて脱力した母の表情に、折角抱いた希望もかき消えそうになるけど、なにもかもはがれ落ちたところに降り注ぐ桜のはなびらが、とても美しく見えた。美しい場面だった。

んななかで、一人無神経に明るい主人公の彼氏。「彼はきっとなにもわかってない」。わかってなくていいのだ。太陽はいちいち地上の出来事に注意を払わないし、顔を出さない日もあるけど、いつだってかわらず地球をみつめている。
幸せかどうかなんて、そこにある太陽に、気づくかどうかだ。

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