子供連れケニア・サファリ旅行記10 ケニア山編3

 2007.4.13〜14(2007.4.7〜4.21)
 病気で倒れる!



01マウントケニア サファリクラブの朝

2007年4月13日
 ケニア山の朝はひんやりとした静寂に包まれていた。ベッドから起き出して見ると、昨晩はあまりに真っ暗で周りが何も見えなかったのだが、今は我々の宿泊している棟が森の中に点在する小屋の一つであるのが見て取れる。窓からは山の斜面に沿って浅い谷の方向が良く見通せるのだが、人工的なものは何もなく、延々と森が続くだけだった。要するにジャングルの中にいるようなイメージなのだ。しかし、我々はちゃんとした小屋にいるし、眼下には昨日車で送ってくれた道があって、密やかではあるが丁寧に整えられた環境にいることがわかるのである。

 暖炉を見てみると、火は既に落ちていて、少し肌寒い感じだった。しかし、燃えつづけたのだろうか。昨日組まれていた木は、ほとんど灰になっていた。しかし、煙が出つづけたと見えて、部屋の空気は煙たさと妙な匂いで満ちていた。その影響もあってか、連れ合いのさんちゃんは、起き抜けに「なんだか頭が痛い」と訴えていた。私も少し頭が重い気がしたのだが、娘を見ると全くそんな気配は感じられず、一番元気があるのは娘なのかも知れないと思った。

 朝の用意を済ませて、ピックアップサービスを頼む。歩いて行こうにも、昨晩は真っ暗な中を送ってもらったので、レストランのある本館に向かう道が分からないのだ。それに距離感もない。しばらくすると四駆が大きな音をたてて現れたので、それに乗り込んだ。

 四駆はさらに大きな音を立てて反転すると、車が一台ようやく通れるような急な坂を登り始めた。なるほど、こういう道だったのかと思う。昨晩は、坂道を下っている感覚はあったのだが、周りが見えなかったのでイメージが出来なかったのだ。しかし、その急坂を数秒登ると、その先がさっと開けて、大きな庭が見えた。そして、その先にお城のような立派な建物が見えたのである。「あれがレストランのある本館?」と思っていると、イメージしていた時間の半分くらいでそのお城のような建物に到着してしまった。こんなに近かったんだ。

 昨晩は不案内に加えて真っ暗だったので、時間的な錯覚を起こしたのだろう。これなら、徒歩でもそんなに時間はかからないのではないだろうか。運転手がドアを開けてくれたので、軽く挨拶して降り、家族三人ともども本館の中に入って行った。





マウントケニアサファリクラブの朝食
バイキング方式がありがたい!朝食


マウントケニアサファリクラブの朝食
食べたいものだけすばやく食べられるよ


02朝食・庭の散歩・そして体調悪化

 朝食はバイキングだった。これはありがたい。
 昨日の食事はコース料理だったので、選ぶ範囲が極端に狭かった上に恐ろしく出てくるのが遅かったのだが、バイキング方式なら勝負が早い。子供連れで一番困るのが、「食事の時」だと思うのだが、とにかく子供が飽きる前に食べる切ることができるこの方式は、本当に重宝するのである。
 ミルクなどの飲み物、ヨーグルト、パン、フルーツなどを取って、テーブルにつく。シリアルなどもあるので、娘も喜んでいるようだった。それをすばやく食べてしまう。そして、帰りのピックアップは頼まないことにして、レストランから見える庭を散歩しながら、ブラブラ帰ることにした。

 レストランの窓を開けるとそのままテラスに出ることが出来て、さらにステップを降りると、庭に出ることが出来た。庭への降り口にはクジャクが数羽いて、朝の食事を楽しんでいるようだった。しかし、クジャクはアフリカの鳥だっただろうか?確かアジアが原産だったような気がする。このマウントケニアサファリクラブ周辺は、昨日のリャマといいクジャクといい、本来アフリカにはいない動物がたくさんいるらしい。そういう意味では、高度に作りこまれたところなのだろう。

 また、その広大な庭を見ると、丹念に刈り込まれた草がウネウネとした起伏に沿って張り付くように広がっており、ある種、ゴルフ場にいるような錯覚を覚えてしまう。こちらも丁寧に作りこまれているようだ。正面の庭の中ほどに小さめなプールが配置されていて、まるでゴルフ場のウォーターハザードのようだった。そして、その先には河が見え、本物の池もあった。そしてさらに緑色の絨毯は続いて、ある線を境に忽然と森へと変わるのである。そして森がひとしきり、見渡す限り続いた先には雲にかかった山脈が黒々と見えていた。視界の届く限界だ。そしてその山脈から大きく天につきあがるようにひときわ高く鋭く尖った山が飛び出しているのが見えた。ケニア山だ。少しかすんだ感じがしたが、その姿を見ることが出来た。なるほど、こうしてみると、その象徴的な感覚が良く分かる。どこかマッターホルンに似た形が、何かを感じずにはいられない気高いものとしてそこに存在するのである。すかさずさんちゃんが写真におさめていたが、実は今回の滞在中、ケニア山が見えたのは、この時だけだった。なかなか見えないというのも、神秘性を増す演出なのかも知れない。

 ところでこの広大な庭。見れば見るほどゴルフ場のようだった。実に手入れが行き届いているのだ。そして、その庭には、色んな種類の鳥たちがあちこちに散らばっていて、熱心に食事をしていた。大きいのも小さいのもいて、大きいやつは鶴くらいの大きさに見えた。鳥のグエーッという鳴き声が、時々、ビックリするほどの音量で響く。そしてささやくような鳴き声が続き、そしてまたグエーっと響き渡るのだ。のんびりした光景が広がっていた。アンボセリにしてもナイロビにしても、行動がかなり制限されていたので、これだけ広い空間を自由に歩き回れるのは久しぶりだった。かなりの開放感だ。そんな感慨に浸っていると、娘の海パダは無謀にもなだらかな下り坂になっている庭を、池方面に向かってダッシュし始めた。確かこのあたりは高地なので、あまり走らない方がいいのでは、と思ったりもしたが、ほっておくことにした。彼女も久しぶりの開放感で満たされているに違いないからだ。

 庭の下り坂を娘についてゆっくりと降りていく。朝露に濡れた草が靴に絡みつき、足元はいつの間にかぐっしょりと濡れてしまっていた。池近くまで降りていくと、大きめのガチョウのような鳥やら、コウノトリのような大型の鳥やらが、こん然一体となってついばんでいた。少し近づいたくらいでは動こうともしない。
 池の辺まで来ると、池の中にも水鳥がたくさんおり、また池の周りの木の上には、先ほどのコウノトリのような鳥がたくさんとまっていた。あとで聞いたのだが、このコウノトリのような鳥は、「マーラブーストーク」(Marabou stork)と言うそうで、日本語では「アフリカハゲコウ」というらしい。やはり、コウノトリの一種だったんだ。ハゲコウというだけあって、頭と首のあたりがハゲていた。

 ところで娘はここぞとばかりに走り回り、鳥を追いかけ、親を追いかけさせていた。私も娘に付き合って追いかけ合いをしていたのだが、少し体が重いような感じがしてきた。それに何だか気持ちも悪くなってきたのである。疲れが出たのかそれとも高地で走り回ったからなのか。ちょっと嫌だなという感じがしてきた。
 しばらく庭で遊んでから、坂道をゆるゆると登って戻り、レストランのある本館の裏側(広大な庭の反対側)を散策することにした。

 本館の裏側は建物に囲まれるような小さな中庭があった。その端に行くと、スーベニアショップ(売店)があり、様々なお土産品などが売られていた。内容的には今までの休憩所ショップと大差はなく、木彫りの動物や絵葉書などが置かれていて、動物に関する絵本などもいくつか売られていた。しかし、そのショップに着いたあたりになると、体調が悪化してきたのがハッキリと分かるようになってきた。これはまずい。
 連れ合いのさんちゃんに「体調が悪くなってきた」ことを告げると、連れ合いも「頭痛が続いている」ということだった。でも、頭が痛い以外は特に大丈夫だということなので、さんちゃんはもうしばらく娘に付き合うことにして、私だけ先に部屋に戻って休憩することにした。


ケニア山(Mt. kenya)
これがケニア山

マウントケニアサファリクラブの庭
広大な庭 奥に見えるのが本館

マウントケニアサファリクラブの庭
向こうに鳥が歩いているよ

アフリカハゲコウ(Marabou stork)
これがアフリカハゲコウ(Marabou stork)


03部屋で静養/連れ合いと娘はゴルフ?

 部屋まで車で送ってもらい、ベッドに横になると、自分の体調が思った以上によくないことが自分でも分かった。とはいえ、今のところは寝るしかないのでおとなしくしているうちに眠ってしまった。

 部屋に誰かが入ってきた気配で目がさめる。さんちゃんと娘の海パダが帰ってきたようだった。話を聞くと、スーベニアショップにいたゴルフのコーチに誘われて、ミニコースを回ってきたらしい。そして、さんちゃんはそれなりにプレーしたそうなのだが、娘はコースを走り回って、結局のところゴルフコーチはコーチするどころではなく、ベビーシッター状態だったそうだ。そして、先ほどのマーラブーストークのものと思われる大きな鳥の羽をいくつも持ってきていた。彼女の関心を引くために、コーチが拾ってくれたらしい。コーチの努力が偲ばれるところだ。
 さんちゃんの持ってきた体温計で体温を測ってみると、37.2度だった。朝たくさん食べたのもあって、食欲もなかった。昼食はパスすることにして、二人で再び昼食を取りに戻ってもらうことにした。そして、夕食の時間を18時30分に遅らせることにした。

 二人を見送った後、再びベッドに戻って眠っていると、ノックをする音で再び目がさめた。おかしいなと思って起き上がっていくと、今朝方頼んだ洗濯物を持ってきた人だった。御礼を言って受け取り、再び眠る。そして、さんちゃんと娘の二人が食事を終えて帰ってきた。15時30分だった。
 雨が降ってきたらしく、とりあえず娘も昼寝をさせることにする。もう一度、熱を測ってみると、37.8度にあがっていた。咳が出たり鼻が出たりはしていないので、風邪と言う訳ではないし、もしかしたら高山病かも知れない。ここは標高が高く、ホテルの看板には、「標高2135メートル:7,000フィート」と書かれていたから、案外それが当たっているのかも知れない。いずれにしても、とにかく休むのが一番いいようだ。そして、3人で横になったのだが、娘は全然眠る気配がなくグズグズ言うので、雨の切れ間を狙ってさんちゃんが娘を連れて動物孤児院に行くことにした。

 このマウントケニア・サファリクラブの動物孤児院(アニマルオーファネージ)は、今回、このホテルを選んだ理由の一つになっていた。前述のとおり、いろいろな動物と触れ合うことができるのである。基本的に「触れ合うことの出来ない」サファリとは違い、実際に触れるのは娘にとっては大きいと思ったからだ。ただ、ここ以外にも「ナイロビのチーター」や「ナイロビのキリン」やら「昨日のサイ」など、既に触れ合うのが通常は難しい動物たちと触れ合って来てはいるのだが。

 さんちゃんは私が寝ている間に行くのを気にしているようだったが、そんなことを言っている場合ではない。むしろ、さんちゃんも決して体調が万全ではないようなので、こちらの方が気を使ってしまう。そして、二人は16時ごろに再び小屋を出て動物孤児院へと向かった。私はまた眠ることにした。


 


ゴルフ場のさんちゃん
あ、グリーン上を走っているのは誰だ!!


もう、ゴルフなんかどうでもええわ、って感じ?

04動物孤児院(アニマルオーファネージ)

 18時30分頃、二人が帰ってきた。
 サルやらヌーやらリャマやらゾウガメやらと触れ合ってきたらしい。それに、ダチョウやサイやピグミーヒッポ(コビトカバ)やチーターなどもいたらしい。娘はかなり楽しんだようだったが、その中の一匹にかなり角で尻をつつかれたらしく、「つんつんつつくから、いややったわ」という感想だった。娘曰く「ブッシュバックの赤ちゃんだった」ということなのだが、ブッシュバックといえば大型の鹿だ。う〜ん、そうなのだろうか。
 それから、動物孤児院は寄付によって成り立っているらしく、「US50ドル寄付してきた」とのことだった。その代わり、タイル製のネームプレートがプレゼントされるらしく、「Umi-padaと書いてきたよ」とのこと。なるほど、これで娘の名前もアフリカに刻まれることになったわけだ。

 そういえば、もう夕食の時間なのだが、まだ食べる気にはなれなかった。それに、さんちゃんもまだ胃が膨れている状態だったので、19時30分に再変更の電話を入れる。夕食もパスすることになるんだろうか。我ながら、どうなるんだろうという不安に襲われてしまう。

 と言いながらも、やることはやらないといけないので、私が再び寝ている横で、さんちゃんと娘とで風呂に入ってしまうことにする。しかし、そこで何だか分からないが娘が粗相をして、さんちゃんに叱られて号泣してしまう。さんちゃんも徐々に体調が悪くなってきて、にっちもさっちもいかなくなってしまった。
 19時40分になり、約束の時間が過ぎたところで、夕食をキャンセルすることにした。三人とも夕食は取らずに、そのまま寝支度をして寝ることにしたのである。ここまで体調的には順調にきていたのだが、ここに来て両親ともに倒れることになってしまった。4月7日に日本を離れて8日目。今まで飛ばしてきたツケがここで一気に出てきてしまったのだろうか。

 そして、3人とも寝ていたところ、ドアをノックする音で目が覚める。連れ合いと娘は眠っていたので、私が起き出してドアに向かうと、湯たんぽを持った背の高い黒人男性が立っていた。ロッジの制服を着ている。今夜は冷えるので、湯たんぽを使ってほしいということらしい。

 連れ合いと娘が寝ているので、静かに作業してほしいとお願いして、暖炉に火を入れてもらうことにした。男は大きく頷くと一旦外に出て、しばらくして薪を抱えて戻ってきた。そして昨日と同じように木を組んで火をつけてもらった。お礼に100ケニアシリングのチップを渡すと、その男も私にお礼を言って去っていった。それを見届けて、私も眠りについた。




娘の尻をを突いたヤツ ブッシュバックではないね



ちょっと恐いのかな?

05連れ合いも体調不良に・・・

2007年4月14日
 今朝もケニア山の天気はすこぶる良かった。昨日同様に、暖かな日がさんさんと差し込んで、さわやかな朝を演出しているかのようだった。しかし、暖炉の煙は相変わらずで、部屋の中は目を開けるのも辛いくらいの煙たさだった。もしかして、この煙が体調悪化を助長しているのかも知れない。

 私は睡眠をしっかりとったからか、昨日に比べるとかなり体調が良かった。しかし、私の体調回復と入れ替わるように、連れ合いのさんちゃんの体調は、かなり悪化しているようだった。昨日の頭痛に加えて、胃も痛くなってきたということだ。見た目でもぐったりしているのが分かる。でも、体調も悪いがとりあえず食事には行くというので、気分転換も兼ねて3人でブラブラと歩いていくことにした。

 昨日車で送ってもらった道をゆっくりと歩いていくと、車に乗っていては気がつかないようざわめきが感じられる。空気もうまい。これで、連れ合いの気分も少し良くなってくれたらいいのにと思ってしまう。
 ブラブラ歩いているうちに本館に到着し、昨日と同じくバイキングをいただく。パンがいろいろ選べるので、娘にも好評の朝食だ。そして、それを簡単に済ませたあと、さんちゃんのためにレセプションでマッサージの予約をすることにした。これで、少しでも体調が戻ってくれるといいのだが。

 レセプションでは女性の職員が丁寧に対応してくれ、10時30分からマッサージをやってもらうことになった。値段は1時間50ドルだった。

 ここでさんちゃんは昨日とは逆に一人で一旦、小屋に戻ることになり、私が娘に付き合うことになった。親は交互に倒れてしまっているのに、娘の元気なことといったら。どういう表現が似合うのか分からないが、とにかく一番弱いと思っていた娘が、一番強かったということなのだろう。とにかく体力だけは有り余っているようなのだ。
 因みにマッサージは本館のどこかでやるようで、開始10分前に車でピックアップをしてもらうことにした。これで、当面の心配はない。



洗濯用のかごに入って遊ぶ娘 元気!


我々の泊まった小屋

06食後の散歩

 さんちゃんを見送ってから、表の庭に出てみる。昨日散策したときには何とか見えていたケニア山は、簡単には見せないと言わんばかりに、雲に隠されていた。しかし、天気自体が悪いというわけではなく、ケニア山以外の上空には雲がほとんどなかったのである。何とも不思議な感じだった。
 ここで昨日、さんちゃんと娘の海パダが「ゴルフ場に行った」と言っていたのを思い出したので、ゴルフ場を探してみることにした。ただ行くのではなく、探してみるのだ。

 そこで娘に、「昨日、おとうちゃんはゴルフ場に行くことが出来なかったので、どこにあるのか教えてほしい」とお願いすると、娘は「うんわかった。パダに任せて」というと、ずんずんと歩き始めた。そこから、娘の歩いていく方向に、とにかくついていって歩き回ってみたのだが、当然のことながらゴルフ場らしきところには全くもって到達しなかった。しかし、それはそれとして散歩を楽しむ。しかし、この庭自体がゴルフ場っぽいので、なんだか不思議な感じだった。

 そうこうしているうちに、さんちゃんのマッサージが終わる時間になった。娘に言ってレセプションの方に戻った。そして、11時40分ごろ、マッサージを終えたさんちゃんと無事合流することが出来た。

 さんちゃんも気分が少しマシになってきたというので、三人でゆっくりと散歩することにした。中庭に移動してみると、中庭には七面鳥が3羽いて、時々思い出したように特徴的な大声で鳴いていた。1羽が鳴くとそれにつられるように他の2羽もほぼ同時に鳴くのが面白い。そういえば、七面鳥もアメリカ大陸の鳥だったような気がする。本当にこのホテルはフュージョンだなと思うのだ。

 中庭でしばらくブラブラしてから、ホテルのゲート付近に移動すると、アートギャラリーと書かれた建物が見えてきた。入り口の付近には、金属で出来た動物のオブジェなども飾られている。中を覗いてみると、工芸品や絵画などが売られているようだった。やはりアフリカだけあって、動物の絵などが中心だ。象やライオン、カバなどをフィーチャーした絵が並べられている。デザインの仕事をしているさんちゃんは、美術品には目がなく、以前は、バリ島でバリ絵画を買って帰ったりしたものだが、今度はあまり気に入った絵がなかったようだった。小さな額縁を三個(各9ドル)を購入し、ギャラリーをあとにした。あとでレシートを見てみると、「コースター3個」となっていた。何でだろう。



まるで古城のようなホテル本館


アートギャラリー


07昼食のあとに動物孤児院へ

 散歩を終えて本館に戻り、昼食をとることにする。
 さんちゃんは、まだ具合がよくないので、ホットミルクとスープだけ飲むことにして、私と娘は通常通りの食事をすることにしたのだが、やはり例によって食事が出てくるのが極端に遅かった。とにかく遅いのだ。日本でも「なかなか出てこない」ことは、それなりに経験すると思うのだが、このマウントケニア・サファリクラブの食事の遅さは、とても我々の常識では図れないものがあった。それに、さんちゃんが注文した「ミルク」ですら待てど暮らせど出てこないので、ついにさんちゃんがキレてしまう。ウェイターにきつく抗議したのだが、ウェイターはものすごく紳士的に謝罪していた。

 このあたりは高級ホテルなのかも知れないが、お客のニーズに合わせた行動もして欲しいものだった。いずれにしても、小さい子供をつれた家族連れには全くもって向かない施設なのかも知れない。食事のたびにそれを思い知らさせるのは、正直言って辛かった。今後、このマウントケニア・サファリクラブを訪れる予定のある方は、くれぐれも覚悟して欲しいと思った。

 そして、何とか食事を終えたところで一旦部屋に戻ることにするが、夕食の時間は、やはりずらすのがいいということになって、18時30分から取ることに変更する。そして、車を呼んで全員で部屋に戻った。

 さんちゃんはすぐにベッドに戻って眠り、私と娘は、部屋でぬり絵や動物フィギュアなどで遊んで時間をすごした。しかし、部屋の中でいつまでも過ごすことも出来ないので、16時40分ごろになって、娘と二人で動物孤児院(アニマルオーファネージ)に行くことにして、小屋を出ることにした。どうやら入場料のツケがきくらしく、ホテルのレセプションにまず行けばいいとのことだった。

 とりあえず小屋を出て件の坂道をゆるゆると歩いて登っていき、途中のテニスコート横にあるアニマルオーファネージの入り口を確認して、さらに進んでホテルのレセプションに到着した。そして、ホテルの女性従業員に「動物孤児院に行きたいのだが」と告げてみると、「もう受付時間は終わったから無理」と断られてしまった。そう言われても困ってしまうので、何とかならないかとさらに告げたところ、ホテルの正面玄関前に建っている「ワイルド何とかセンター」に行って聞いてみてくれ、と言われてしまった。よくわからないが、動物孤児院の管理センターのようなものらしい。

 仕方ないので言われたとおりホテルの建物を出て、道を隔てた向かいにある三角屋根の小さな建物に向かう。これがどうやらレセプションで言われた「ワイルド何とかセンター」のようだ。ドアが開いていたので中に入ると、女性一人が座っていた。小柄の黒人女性で、娘を見るなり「オー! ウミパダ!」と叫んだので、どうやら寄付したときのメンバーか何かなんだろう。これは話が早いと思って聞いてみると、「現金1,000シリングかクレジットカードがないと入場させてあげることが出来ない」という返事だった。なんたることだ。ホテルのゲストでもダメなんだろうか。「昨日は妻がツケで入ったはずなのだが」と食い下がってみても、ダメの一点張りだった。ホテルと動物孤児院は別経営だからだそうだ。私もだんだんアホらしくなってきたので、もう結構ということで、小屋を出ることにした。



アートギャラリー前にあったアフリカハゲコウと記念撮影



アニマルオーファネージ前の道

08やはり庭を散歩するしかないのだ

 小屋を出たところで他に行くところもなく、やはり本館前の広い庭に出る。広々とした敷地に位置しているこのホテルではあるが、結局のところ散策できるのは、この庭だけということなのだろう。
 娘は今朝ほどと同じく緑の広場を自由自在に突進していく。ちょうどいい具合に鳥たちが配置されているので、それを追いかけるのだ。鳥からするといい迷惑なんだと思うが、こちらとしては自分が走らなくていいので、都合がいい。とにかく、娘は走りたいようなので、自由に走らせて見る。そして、そうこうしているうちに、庭の一番低い位置にある池の前まで出てきた。池の周りにはコンクリートの白い細い道がつけられていて、そこにはたくさんの鳥の糞がこびり付いていた。触ろうとする娘に「汚いから触るな!!」と注意しながら、進んでいくと、池のほとりにある細長い木の上に、たくさんの「マーラブーストーク」(アフリカハゲコウ)がとまっているのが目に留まった。

 よく見てみると、木の一番高い位置にたくさんの枝が組み込まれている。どう見てもそれは「巣」だった。マーラブーストークがどんな習性の鳥なのかは知らないが、形からしてコウノトリなので、やはり同じような営巣の習性があるのだろう。娘に巣の位置を教えて、しばらく観察してみることにする。
 すると、巣の中から時々小さなものが動いているのが見えた。念のためにビデオで拡大撮影してみると、やはりマーラブーストークの雛だった。ははあ、なるほど。ここで繁殖しているのだ。
 考えてみれば、人間がうろうろしていて、ケニアでは格段に管理されているこの庭は、天敵に襲われる心配のないすばらしい場所なんだろう。ま、あれだけ高い木のうえにあるわけだから、普通の敵は通常でも襲うことすら出来ないのだろうが。やはり、襲うとしたら大型の鳥や木を登る動物だと思うのだが、人間がうろうろしているところには、あまり近づかないかもしれない。

 しばらく池のほとりでマーラブーストークの雛を観察していたのだが、それも時間とともに飽きてきた。といっても、このマウントケニアサファリクラブで出来ることは限られている。プールで泳ぐには寒すぎるし、建物の中は大人向けのものしかない。ゆったりとすごすにはいいのだが、活動的な子供は、少し体力を持て余してしまうのかもしれない。



マーラブーストークの巣
向かって右の巣の右寄りに雛が見える


3匹の七面鳥は、一日中この中庭にいたようだ

09娘と二人の夕食 そしてマウントケニア最後の夜

 そうこうしているうちに夕食の時間になったので、本館の建物に戻る。そして、レストランの部屋に入って、早めの食事をとることにした。連れ合いのさんちゃんは体調が悪く夕食はパスすることにしたので、今回は私と娘の二人だけだった。
 席について食事の内容を確認してみると、相変わらずの「選択性」だった。とりあえず私は肉を注文しようと思ったのだが、娘は肉をほとんど食べない。出てくるのもすごく遅いしどうしたものかと考えていると、その困惑を察知したのか、ウェイターも心配そうな顔をしてこちらを見ていた。

 「コース料理以外で、注文してもいいんでしょうか?」
 私は思い切って聞いてみた。
 「ええ。それは構いません。お客様のご要望があれば、それに沿ってお作りすることも可能です」

 意外な答えに、一瞬、戸惑ってしまった。もしかして、最初から聞いていたらよかったんだろうか。というより、こういう高級ホテルでは、客のリクエストにいかに応えて行くのかが問われるのだった。すっかり失念していた。そう言えば、ホテルの高島弟も苦労していたし。なるほど。
 しかし、どのように注文したらいいだろうか。どうやれば娘の好きなものを作ってもらえるだろうか。そう思って一番最初に頭に浮かんだのは、「オムライス」だった。これは娘の海パダが大好きで、食べ終わるのも格段に早いメニューなのである。オムライスを作ってもらうか、それとも・・・と考えて、こう切り出して見た。

 「ケチャップはありますよね」
 「ええ、あります」
 「まず、ご飯を軽く炒めて、ケチャップを混ぜてもらえませんでしょうか?」
 「ああ、ケチャップライス・・・でしょうか?」
 「ケチャップライス?・・・そうですね。それです。それを娘に作ってもらえませんか?」
 「分かりました」
 「それに、魚を用意してください」
 「分かりました」






さて、食事をしようか

 そう言うと、ウェイターはニコッと笑って去っていった。そして、程なくしてケチャップライスが運ばれてきたのだが、それは私のイメージしたのとは若干違っていたのである。私はファミレスのオムライスか、家庭のチキンライスのように、どばっと盛ってあるか、あるいはラグビーボール型に成型されたのが、ドンと乗っているイメージだったのだが、運ばれてきたのは小さなドーム型のケチャップライスがものすごく上品に配置されていて、その周りに野菜やら何やらが、これまたきれいにワンプレートに盛り付けられていたのである。ケチャップライスと言いつつ、高級レストランの雰囲気が漂っていたのだ。ううむ、娘には似合わないっ!と思ったのだが、これが高級ホテルの粋なのだろう。しかし、足りるだろうか?

 娘は予想通り、このケチャップライスをバクバク食べたのである。もちろん同時に運ばれてきた魚もである。はぁ、最初からこうしておけば良かった。娘も食べ慣れた味がいいんだろう。子連れ海外旅をする以上、こういう努力をこれからもしていかなければならないと思った。

 しかし、最後のデザートの前で感情が高ぶったのか、娘が急に泣き出したので、あわてて抱きかかえるようにして車で部屋に戻る。すると、連れ合いはまだ寝ていた。でも、我々の帰ってきた音で起き出したので、娘を寝かせる用意をして、3人で布団にもぐりこむことにした。
 「暖炉の火をどうしようか・・・」
 実は、どうも頭が痛いのは暖炉のせいではないか、というのがほぼ確信できるまでになってきたので、試しに火を入れないで寝てみることにした。少し寒いかもしれないが、頭が痛くなったり、目が痛くなったりするよりはマシだと思ったからだ。

 そして、今晩がこの「マウントケニアサファリクラブ」の最後の夜だ。明日にはマサイ・マラへと移動するのである。なんだか病気ばっかりだったのだが、「サファリの予定ない」この場所を選んだかのように出たので、これも旅の縁なのかもしれないと思った。もともとのんびりする場所として選んだのだが、これが妙なところで功を奏した、とも言えるのではないだろうか。長旅を常に走るわけにも行かないので、こういうのはプロセスのひとつなんだろう。

 明日の移動の時間をフロントに確認してみると、「空港への送迎車を9時から9時15分の間に出す」ということだった。10時のフライトだが大丈夫なのだろうか。そう聞いてみると、「空港まで25分だし、大きくない空港なので大丈夫」とのことだった。
 そう、明日はここからすぐの「ナンユキ空港」(Laikipia Nanyuki Airfield)から、マサイ・マラへ飛ぶのである。乞うご期待。


(子供連れケニア・サファリ旅行記10 ケニア山編3「05 病気で倒れる! 了)







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